痛みのメカニズムと発生機序に基づいた痛みの分類

痛み

発生機序で分類すると侵害受容性、神経障害性、疼痛抑制機能低下による痛みに分けられる。

痛覚投射経路

  1. 末梢組織が侵害される。感覚神経終末が活動電位を発する。この信号はC-fiberとA delta-fiberによって伝導される
  2. 脊髄後角細胞に伝えられ脊髄上行路を経る
  3. 視床細胞を経る
  4. 大脳皮質体性感覚野に伝達されると痛覚が生じる

C-fiberによって伝達される情報は脳幹、辺縁系、中脳、視床など広範にわたる。

A-deltaによって伝達される情報は局在性にすぐれている。

急性痛と慢性痛

急性痛

交感神経や副腎髄質系の活動が優位となる

慢性痛

通常3ヶ月以上続く痛みをいう。慢性炎症や脳回路網の変容に起因することが多い。

発生機序に基づいた痛みの分類

侵害受容性の痛み

組織が侵害されると発痛物質や炎症メディエーターが産生される。

侵害受容器が活性化されても必ずしも痛みとして認知されるわけではないことに注意。侵害受容器は順応はしない。

侵害受容器

温度侵害受容器、機械侵害受容器、化学侵害受容器、サイレント侵害受容器、ポリモーダル侵害受容器

血流の減少している筋肉を収縮させると侵害刺激がなくても痛みを生じるらしいが、これはなぜだろう? 拘縮によってどの程度の時間軸で血流を阻害されると痛みとして認知されるのだろうか。足を組んで血流が阻害された10分の話と骨折後固定した1ヶ月の話は全く別物であると思われる。。。

発痛物質や炎症メディエーターを産生する組織

細胞膜・血漿・血小板・肥満細胞・皮下組織・マクロファージ

発痛物質や炎症メディエーターとして産生される物質

H+・K+・ATP・NGF・PG・BR・5ーHT・炎症性サイトカイン

神経終末にはこれらの物質が結びつく受容体が存在している。

痛みの軽減にはNSAIDsやSelective COX-2阻害薬が服用されることが多い。

神経障害性の痛み

特徴は電気が走るような痛み、allodynia、灼熱痛や自発痛。

allodyniaは触刺激によって痛みを感じる異常である。これは脳脊髄中のミクログリアであるとされている(2). 神経系が傷つくとATPがCSF内に放出される。ミクログリアは肥大化してBDNF(Brain derived neurotrophic factor)を放出する。このBDNFは神経興奮の際の平衡電位を逆転させる。

神経障害の痛みは慢性痛に転化しやすい。脊髄後角細胞にlong term potentiationが起きる。これは大脳皮質などにおいても異常興奮や脳回路網の変容が起きる。

疼痛抑制機能の低下による痛み

中脳辺縁ドパミン系(mesolimbic dopamine system)(1)の機能低下によるものが大きいとされる。この痛みに関しては末梢組織を検査しても炎症らしき源はみられない。mesolimbic dopamine systemは快の情動系・報酬回路として知られるが疼痛抑制機構も形成する。

社会的・心理ストレスにより不安や恐怖などに長く晒されるとmesolimbic dopamine systemの機能は低下する。すると下行性疼痛抑制系が働かなくなる。

うつ状態や自律神経失調を伴う場合も多いので注意する必要がある

慢性的な疼痛は一次感覚野を変化させ、脳内ボディマップも変化するとされている。

NMDA受容体

Central windup ワインドアップ現象

長期間の慢性痛によってNMDA受容体が敏感になることで過敏性が高まる。

痛みを感知する場所が脊髄内の隣接するニューロンへ広がる←これはつまりアロディニアの発生機序と同じなのだろうか? 

カテコラミンは侵害信号の送信に関わるが、長期間の慢性疼痛によって閾値が下がる。

オピオイド受容体の閾値上昇→疼痛抑制物質であるエンドルフィンが働きにくくなる

自分に対する課題:これらの機序を理解するとリリカなど疼痛抑制に使われる薬がどの部分にどのように効くのか。と一歩進んだ理解ができる。

Central Sensitization and C Fibers

睡眠と疼痛

睡眠不足→島皮質の働き低下→疼痛制御機能低下

どうやら上記の流れで睡眠不足が痛みに対する閾値を低下させることを誘発するらしい。細かい機序も大事だが、睡眠不足が疼痛制御機能を低下させることは過去研究により明確になりつつあるので、質の良い睡眠をどのようにして取るか。そういうところも戦略的に行っていく必要があると思われる。

https://www.jneurosci.org/content/39/12/2291
Sleep loss heightens pain sensitivity, dulls brain’s painkilling response
Neural glitches in the sleep-deprived brain intensify and prolong the agony of sickness and injury

参考文献

  1. Nat Rev Neurosc. 2008 Apr;9(4):314-20. doi: 10.1038/nrn2333. A Common Neurobiology for Pain and Pleasure Leknes 1Irene Tracey
  2. Inoue K, Tsuda M. Microglia in neuropathic pain: cellular and molecular mechanisms and therapeutic potential. Nat Rev Neurosci. 2018;19(3):138-152. doi:10.1038/nrn.2018.2


アスレティックトレーニング 痛み 神経科学
シェアする
林俊之介ATC/CSCSをフォローする
林 俊之介 ATC/CSCS/PHI Pilates Japan Instructor

コメント