肘関節に起きやすいスポーツ障害について 1. OCD 2. UCL損傷 3. 上腕骨外側上顆炎

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1. 離断性骨軟骨炎 (Osteochondritis dissecans: OCD)

上腕骨小頭OCDは成長期投球障害の代表的疾患。関節軟骨が遊離するとlocking症状を呈する場合も少なくない。

可動域検査においては左右差を確認することが重要。なぜなら健側の肘が生理的に過伸展している場合には患側の伸展制限がないようにみえても実は伸展制限があると言う場合があるからである。

画像検査

単純X-P

4方向撮影(正面・側面・屈曲45度正面・尺側45度)(1)

(1)

超音波検査

超音波検査でも軟骨下骨の不整像を確認することができる。個人的には超音波はまだまだ苦手なのでまずは組織がどのように見えるのが正常なのか。何が異常なのか。見極められるようにならねば。

MRI検査

T2 強調矢状断像:軟骨下骨への滑液の有無の評価

Fat sat: 軟骨表面、軟骨下骨の浮腫像を評価  

鑑別診断

Panner病:4−8才に起こる。病変は外側顆骨端核の全体にわたる。良好な自然修復が期待できる。投球障害にしてはあまりにも若年の患者がきた場合、この疾患も頭にいれながら問診を進めていきたい。

保存療法から手術療法への切り替え

  • 骨端線閉鎖後も3ヶ月以上治癒傾向にない
  • 外側
  • 内側不安定症

この3つが考慮される要因である。(2)

(2) Matsui Y, Funakoshi T, Momma D, et al. Variation in stress distribution patterns across the radial head fovea in osteochondritis dissecans: predictive factors in radiographic findings. J Shoulder Elbow Surg. 2018;27(5):923-930. doi:10.1016/j.jse.2017.12.023

手術療法

  • 関節鏡下デブリドマン (arthroscopic debridement)
  • 軟骨骨片固定術 (fragment fixation)
  • 関節面再建術 (joint reconstruction)
    • 自家骨軟骨柱移植: mosaicplasty w/articular cartilage
    • 肋軟骨移植術 (costal osteochondral graft)

などの方法が選択される。関節面再建術では割と早期に関節面の力学的負荷を分散させることが可能なので成績は良好な傾向にある。(3) (と文献にはありますが、実際には誰が手術したか、患者の骨の形態はどうか、軟骨ドナー側の質はどうか、など多くの条件があるので一概には言えないと思われます。)

(3) Iwasaki N, Kato H, Ishikawa J, Masuko T, Funakoshi T, Minami A. Autologous osteochondral mosaicplasty for osteochondritis dissecans of the elbow in teenage athletes: surgical technique. J Bone Joint Surg Am. 2010;92 Suppl 1 Pt 2:208-216. doi:10.2106/JBJS.J.00214

2. UCL損傷

UCLに関連する解剖

Struther’s arcade: この部分で尺骨神経絞扼性障害が起こることもある

徒手検査

Moving valgus stress test (1)

Valgus stress test

Tinel 徴候: 腋窩から内側上腕筋間中隔部分にかけて確認

Extension stress test: 肘頭疲労骨折除外

(1) O’Driscoll SW, Lawton RL, Smith AM. The “moving valgus stress test” for medial collateral ligament tears of the elbow. Am J Sports Med. 2005;33(2):231-239. doi:10.1177/0363546504267804

画像診断

MRIによるMCL anterior bandleの確認。(しかし、MRI検査ではMCLが完全に断裂していても競技継続できている選手がいることを考えると、この靱帯が必要なのか不必要なのかはその選手の身体的戦略、つまり投球時に肘関節へかかる負担がどれほどなのかによるだろう。)

超音波検査による外反ストレス撮影:一般的には2mmの外反動揺性でUCL損傷を疑う

UCL損傷に関連する症状・症候群

Valgus extension overload syndrome: 肘頭および肘頭窩に起こる反応性の骨棘。肘関節への外反ストレスが原因とされている。

肘頭疲労骨折: extension stress testで除外。

尺骨神経亜脱臼

Snapping triceps syndrome ← 今回調べている中で初めて知りました。(2)

(2) Rioux-Forker D, Bridgeman J, Brogan DM. Snapping Triceps Syndrome. J Hand Surg Am. 2018;43(1):90.e1-90.e5. doi:10.1016/j.jhsa.2017.10.014

3. 上腕骨外側上顆炎

肘外側の有痛性障害のうち、特にECRB(短橈側手根屈筋 Extensor carpi radialis brevis)の起始部の腱付着部炎とされている (3)

(3)

関連する解剖: arcade of Frohse

評価

手関節背屈運動に抵抗を加えると疼痛。ECRB起始部に強い圧痛。

Cozen's Test⎟Lateral Epicondylitis "Tennis Elbow"
手関節背屈運動に抵抗を加えると疼痛。この評価はCozen’s testをしているとも言える。

Thomsen test, Chair test, Middle finger extension testがある。

例えばCozen’s test, Mill’s testのテストを知らない医療従事者とコミュニケーションをとる場合、これらのテストが陽性であったと申し送らずにECRBの収縮時痛、伸張時痛ありと伝えた方がスムーズかもしれない。

テニス肘によく似た症状を呈する疾患・症候群

後骨間神経の絞扼性神経障害とされる橈骨管症候群 ← 評価方法を後日しっかりと整理します

滑膜ヒダの腕橈関節内へのインピンジメント (synovial fringeと言うらしいです。初めて知りました。)

1. OCD 2. UCL損傷 3. 上腕骨外側上顆炎 の症状を呈することがある胸郭出口症候群

胸郭出口症候群(Thoracic outlet syndrome)が出現すれば1. OCD 2. UCL損傷 3. 上腕骨外側上顆炎のような症状を呈することがあるので、受傷機転だけで障害を決めつけて評価を進めてしまわないように注意したい。

関連する解剖や用語

斜角筋三角: Subclavian triangle

鎖骨上窩: supraclavicular fossa

前斜角筋-中斜角筋間距離: interscalene distance (ISD) ← 超音波検査で測定可


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