腰の話【ニュートラルゾーンと腹横筋】

ニュートラルゾーン

脊柱は前方では椎間板、後方では椎間関節に負荷を加えながら制動する。Pankabiは動作領域を以下の2つに分けて説明している(1)

Elastic zone: 骨、関節、靱帯に負荷を加えながら脊柱動作をコントロールしている動作領域

Neutral zone: 骨、関節、靱帯に負荷が加わらない動作領域。金岡は脊柱が常にneutral zoneにあれば障害は予防できると述べている(2)

歩行時における大臀筋とハムストリングの役割

大臀筋:歩行時においては股関節のstabilizerとして働く。踵が接地した際に股関節への屈曲モーメントに対して股関節伸展トルクを発揮する。

ハムストリング:大臀筋と比較して股関節から離れた位置にあり、収縮によって股関節に対して運動を起こす際は関節の生理的な回転軸から離れたところに外力が発生し、股関節には偏心性の回転モーメントが発生する(2)とされている。

よって、歩行やランニングによって股関節伸展トルクを必要とする際はまず大臀筋を発火させて関節安定性を高めてからハムストリングを発火させる。

ハムストリングは肉離れが起こりやすい筋肉として知られているが、これはハムストリングの不適切なタイミングでの異常発火と言われている。

ハムストリングの機能は股関節伸展・膝関節屈曲である。ランニング時においては前脚が地面に着地する直前からハムストリングが遠心性の股関節伸展・膝関節屈曲トルクを発揮し始めるわけですが、このタイミング・遠心性トルクの発揮度合いがズレるとハムストリングに大きな負荷がかかり肉離れが起こります。

余談 僕の右半腱様筋肉離れ経験例

僕も実際にc肉離れII度を昨年に経験しました。。。。あれは痛い。昨年は陸上トレーニングを開始したばかりでした。空中での脚の運び方や着地の仕方など色々とわからないことだらけで自分の走り方に全く自信がなく、半信半疑で走っていました。色々と考えすぎると余計なタイミングで余計な筋肉に過度な収縮が入ってしまうもの。これはどのスポーツ動作においてもそうだと思いますが。で、僕の場合は左足で蹴り出して右足が空中にあるフェイズから右足を勢いよく振り下ろそうとした瞬間にブチっといきました。あれから自分でリハビリ・トレーニングを積み重ねてあの時よりかは安全に早く走れるようになりました

腹横筋 draw-in と bracing

腹横筋:腰背筋膜の張力を調整するような役割をもっていると言われている(3)  腹横筋の収縮によって各分節椎間において屈曲方向に対するstiffnessを高めるとも言われている(4)

Draw-in: 腹横筋の収縮によって腹部を取り囲む腰背筋膜の張力が高まる。動きとしては腰椎は直線化(つまり屈曲)、骨盤は後傾の動きとなる。日常生活動作などにおける適切なタイミングでの腹横筋筋収縮トレーニング(神経ー筋の促通)を目的として運動の際はdraw-inの方が適していると述べられている(2)

Bracing: draw-inとよく混同されがちなbracingであるが、ここで少し整理しておきたい。bracingは腹部を膨らませながら腹横筋を収縮させる動作となる。この動作において腹横筋は遠心性収縮を発揮する。筋活動量はdraw-inよりも大きくなる。

体幹筋の発揮タイミング

体幹筋の発揮タイミングについてはHodgesらの研究があまりにも有名である(5) この研究では上肢挙上を行った際に三角筋よりも同側腹横筋の収縮が先に起こっている現象を示している

何らかの外部の刺激が発生すると認識、そしてその刺激がどの程度なのか想定できている場合は多裂筋などのローカル筋をあらかじめ発火させておくことで脊柱の安定化を図るとされている。この一連の流れはフィードフォーワード機能と呼ばれ、錐体外路系によって制御される(このあたりの考え方をもっと深くしればneuro scienceの視点を融合したトレーニングが提供できるようになるのでもっと深めていきたい分野です。)

参考図書・文献

(1) (2)

(3) Tensile transmission across the lumbar fasciae in unembalmed cadavers: effects of tension to various muscular attachments. Barker PJ, Briggs CA, Bogeski G. Spine (Phila Pa 1976). 2004 Jan 15;29(2):129-38.PMID: 14722403

(4) Effects of tensioning the lumbar fasciae on segmental stiffness during flexion and extension: Young Investigator Award winner. Barker PJ, Guggenheimer KT, Grkovic I, Briggs CA, Jones DC, Thomas CD, Hodges PW. Spine (Phila Pa 1976). 2006 Feb 15;31(4):397-405.

(5) Preparatory trunk motion accompanies rapid upper limb movement. Hodges P, Cresswell A, Thorstensson A. Exp Brain Res. 1999 Jan;124(1):69-79.


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林 俊之介 ATC/CSCS/PHI Pilates Japan Instructor

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