乳酸の産生~運動生理学 Exercise Physiology~

最近は運動生理学の復習を始めています。
フィットネスジムがある病院で働くと必要な知識が本当に幅広く、学ぶことも多いので楽しいです。
僕の中でのホットトピックは乳酸。
乳酸の代謝を理解できれば高い運動強度でのエネルギー代謝も理解が進むかな?と思ったので乳酸を中心に色々復習していこうと思います。

ということで今回は乳酸の代謝について書いていきます。
細かい酵素の名前を書き出すとキリがないです。そして、僕も全ての酵素の名前や役割を把握しているわけではありません。大まかな流れのみ復習したい人向けです。

乳酸は運動による老廃物?

1929年にCori氏が提唱した知見では運動中に発生する乳酸は運動後に肝臓で糖に戻されるのを待つだけ老廃物という見方だった。(1)

乳酸は疲労物質。僕がまだ中学の頃はよくそのように聞きました。(まぁ、中学生だったので乳酸がなんなのかわかってもいなかったのですが。)

実際のところは乳酸は疲労物質ではありません。乳酸をたくさん作り出せるということは筋グリコーゲンの濃度が高い状態であるということです。逆に筋グリコーゲンの濃度が低くなってくると乳酸の産生もされにくくなります(5)

糖分解が進むと乳酸ができる

運動時に多く乳酸ができるのは糖の分解が増えるからである。これは体内が無酸素状態になったから乳酸が発生したわけではない

事実、果糖を摂取すると安静時であっても血中乳酸濃度が高まることが報告されている
安静時に体内が無酸素状態になることはまずありえない。特に呼吸器疾患がない人であれば安静時の酸素飽和度は95%以上あり、無酸素状態にはならない。なのに、安静時に果糖を摂取すれば血中の乳酸濃度が少し上昇するのである

この事実を踏まえると体内が無酸素状態になったから乳酸が発生したとは考えられない。

血糖値が高まれば糖の代謝が高まる。しかし、ミトコンドリアでの酸化反応量はすぐには増えない。その結果、処理しきれないピルビン酸が一時的に乳酸となり、血中へ放出されるということである。

つまり、糖の分解量がミトコンドリアで酸化反応量以上に高まれば、その差分が乳酸となる

(糖の分解量)-(ミトコンドリア酸化反応量)=乳酸

ミトコンドリアでの酸化反応は生きている限り常に機能している。酸素摂取量は基本的に全身のミトコンドリアが利用した酸素の総量である(2)

糖の分解速度はすぐにあげられるが、その上がり方は過剰で必ずしもミトコンドリアでの反応量に見合った量ではない(2) つまり、糖の分解量がミトコンドリアで酸化反応量以上に高まれば、その差分が乳酸となる。

LT強度でアドレナリン分泌も増える

アドレナリンは血糖値を高める働きがある。LTから急に乳酸が多くできるようになるが、この運動強度でアドレナリンの分泌も増える(4)

つまり、アドレナリンが分泌される運動強度に達すると血糖値が高まり、糖分解も亢進し、ミトコンドリアで酸化反応量以上に産生されたピルビン酸は乳酸となる。

参考文献

  1. Carl F. Cori and Gerty T. Cori GLYCOGEN FORMATION IN THE LIVER FROM d– AND l-LACTIC ACIDJ. Biol. Chem. 1929 81: 389-.
  2. 乳酸サイエンス
  3. An enzymatic approach to lactate production in human skeletal muscle during exercise. Spriet LL, Howlett RA, Heigenhauser GJ. Med Sci Sports Exerc. 2000 Apr;32(4):756-63. Review.
  4. Plasma catecholamine and blood lactate responses to incremental arm and leg exercise. Schneider DA, McLellan TM, Gass GC. Med Sci Sports Exerc. 2000 Mar;32(3):608-13.
  5. High glycogen levels enhance glycogen breakdown in isolated contracting skeletal muscle. Richter EA, Galbo H. J Appl Physiol (1985). 1986 Sep;61(3):827-31.
  6. Relation between muscle Na+K+ ATPase activity and raised lactate concentrations in septic shock: a prospective study. Levy B, Gibot S, Franck P, Cravoisy A, Bollaert PE. Lancet. 2005 Mar 5-11;365(9462):871-5. Erratum in: Lancet. 2005 Jul 9-15;366(9480):122.

参考図書


炭水化物のすべて: 山本義徳 業績集1


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林 俊之介 ATC/CSCS/PHI Pilates Japan Instructor

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