糖の代謝経路(車好きな僕が例えるなら糖分解はニトロ。ミトコンドリアはエンジン。)

最近は運動生理学の復習を始めています。
フィットネスジムがある病院で働くと必要な知識が本当に幅広く、学ぶことも多いので楽しいです。
僕の中でのホットトピックは乳酸。
乳酸の代謝を理解できれば高い運動強度でのエネルギー代謝も理解が進むかな?と思ったので乳酸を中心に色々復習していこうと思います。

ということで今回は乳酸の代謝に入る前の基礎的内容の糖の代謝だけポイントをザッとおさらいしようと思います。
細かい酵素の名前を書き出すとキリがない。そして、僕も全ての酵素の名前や役割を把握しているわけではありません。
大まかな流れのみ復習したい人向けです。

体内の糖はグリコーゲンとグルコース

グルコース:血液の糖。比較的エネルギーとして使いやすい状態

グリコーゲン:貯蔵の糖。グルコースが多数集まっている。肝臓や筋肉にある。

何段階もの酵素反応を経てエネルギーが生み出される

酵素: ある物質を別の物質へ変える働きをするタンパク質

基質:酵素が働いて変わる物質のこと

ピルビン酸:
グルコースが代謝されて様々な反応を経るとピルビン酸ができる。
糖の利用に関していえばピルビン酸はミトコンドリアに入って代謝される

NADH (還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)
糖の代謝過程で発生する。
NADHがミトコンドリア内であればATPができる。
糖の代謝は細胞質で起こるのでNADHは細胞質で発生する。
よって、NADHはミトコンドリア内へ移動する必要がある。
NADHのままではミトコンドリア膜を通過できない。

TCA回路(クエン酸回路)
ミトコンドリアでATPを生み出す基本の反応経路
この回路そのものでATPが生み出されるわけではない
この回路で出てきた電子が受け渡されていく電子伝達系と呼ばれる反応でATPが合成される
電子伝達系では水素が出てくるが、その水素を受け取る反応に酸素が必要である。

乳酸は無酸素運動の代謝物ではない

よく巷で耳にする「無酸素運動をすれば乳酸が出てくる」という表現。
この表現は厳密に言えば正しくない

そもそも無酸素運動という運動は存在しない(どれだけ高強度の運動でも必ずミトコンドリアがエネルギー産生を行っているので)という点はおいておいて。

先ほどピルビン酸とNADHが出てきました。
この両者の関係性を整理しましょう

グルコースが分解されてピルビン酸になるまでに2つのNADから2つのNADHができる。

糖の分解が多く進むとNADHが溜まってきてNADが少なくなってくる。
ここで乳酸脱水素酵素の働きによってNADHがNADに戻る。
この過程で乳酸ができる。
NADの不足が糖の分解スピードの制限因子となっていた場合は乳酸ができることによりNADの供給量が増えて糖の分解をさらに進めることができる 
という流れになる。
ピルビン酸を乳酸にする過程では酸素が必要ない。

ミトコンドリアの反応可能量は厳密にコントロールされている

糖の分解は急に増やすことができるが
ミトコンドリアの反応可能量は急に増やすことができない。逆に生きている限り急に減ることもない。例え高強度の運動をしたとしてもミトコンドリア内の反応は急に加速したり減速したりできない。

ワイルドスピードで例えると糖分解とミトコンドリアの僕の中でのイメージ

糖の分解→ニトロ

ミトコンドリア→エンジン

です。普通に走行する分にはエンジンだけで良いですが、よりパワーが欲しいときにニトロで加速する。そんなイメージです。そしてそのニトロでの加速は長続きしません。

対してエンジン(ミトコンドリア)は車が走る限り常に働いている動力源。しかし、発生できるパワーは常に一定です。(回転数でトルク・パワー発揮が変わるという話はおいておきます。)

さて、乳酸は無酸素運動の代謝物ではないの話の続きですが

乳酸(ニトロ)は酸素を必要としません

ミトコンドリア(エンジン)は酸素を必要とします

「乳酸は無酸素運動の代謝物」の仮説が正しいとするならば

乳酸が発生するような高強度運動(ニトロを使う場面)であってもミトコンドリア(エンジン)では酸素を必要とする反応が進んでいる という事実を無視した表現であることがわかります。

確かに乳酸は酸素がなくても産生できますが、それは乳酸の蓄積が無酸素状態によるものとはいえません。

次回はグリコーゲンの代謝からもう少し続けていこうと思います。


乳酸 栄養
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林 俊之介 ATC/CSCS/PHI Pilates Japan Instructor

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